法廷

CSI効果とは何か:研究が実際に示していること

CSI効果とは、法科学を扱うテレビドラマが、証拠に対する陪審員の期待を変えるという主張です。調査では期待の高さが確認されていますが、実際の評決の研究では、検察官が恐れた無罪評決の増加は見つかっていません。

公開日 14分で読めます

CSI効果と呼ばれる6つの主張の表:強い検察官効果、弱い検察官効果、被告人効果、制作者効果、教育者効果、警察署長効果について、それぞれ誰が主張し、何を述べているかを示します
このページの内容
  1. CSI効果とは
  2. 「CSI効果」と呼ばれる6つの異なる主張
  3. CSI効果は実在するのか:研究が示すこと
  4. 「テクノロジー効果」(tech effect):よりよい説明
  5. 裁判所と捜査員の対応
  6. 3D記録が果たす役割
  7. よくあるご質問

要点

  • CSI効果とは、CSIのような犯罪ドラマが法科学的証拠への期待を高め、その結果、陪審員は証拠がなければ無罪評決を下し、証拠があれば過度に信頼する、という主張です。
  • ミシガン州の陪審員候補者1,027人を対象とした調査では、46%があらゆる刑事事件で科学的証拠を期待していましたが、その期待によって、どう投票するかという回答が変わることはまれでした。
  • CSIの放送開始後も、米国連邦裁判所と4つの大きな州では無罪評決率は上昇しませんでした。カナダでは番組のずっと前から上昇しており、カナダとオーストラリアの研究でも有害な効果は見つかりませんでした。
  • 変わったのは実務です。検察官は証拠がない理由を説明し、陪審員にテレビの視聴について尋ねるようになり、捜査員は関連性の有無にかかわらず証拠を収集するよう圧力を受けています。

CSI: Crime Scene Investigation(邦題「CSI:科学捜査班」)ほど、さまざまなことの原因とされてきたテレビ番組はほとんどありません。2000年代半ば以降、検察官、裁判官、ジャーナリストは、この番組が陪審による法科学的証拠の扱い方を変えたと主張してきました。この主張はCSI効果として知られるようになり、テレビについてなされた主張の大半よりも多く検証されてきました。

このガイドでは、CSI効果とは何か、その名前の裏に隠れた6つの異なる主張、研究で判明したこと、そして法科学的証拠を収集し提示する人々にとっての意味を説明します。

CSI効果とは

CSI効果とは、テレビの犯罪ドラマ、とりわけCSI: Crime Scene Investigationが、実際の法科学的証拠に対する人々の判断を変えたという主張です。陪審員はあらゆる事件で法科学的証拠を期待し、それがなければ無罪評決を下す、あるいは証拠を実際以上に確かなものとして扱う、というものです。同じ呼び名は、被害者、捜査員、学生、犯罪者への影響にも使われます。

名前の由来

CSI: Crime Scene Investigation(邦題「CSI:科学捜査班」)は2000年に放送が始まり、2002年にCSI: Miami、2004年にCSI: NYが続きました。Donald Shelton判事が引用したNielsenの数字によると、2006年のある夜には3,000万人がCSIを視聴し、その週の上位10番組のうち5番組が刑事事件の科学的証拠を扱うものでした(Shelton, NIJ Journal, 2008)。法律家、裁判官、ジャーナリストが無罪評決を番組のせいにし始めると、メディアはこの不満をCSI効果と名付けました。

2002年までに、CSIは米国で最も多く視聴される番組になっていました。この言葉は同年の終わりごろ、Time誌の記事で一般に使われるようになったとみられます。その記事は、警察の研究所にもテレビの研究所と同じことが何でもできるという一般の期待の高まりを扱い、すでに陪審員候補者層への影響を懸念していました。この言葉は2004年に使われる機会が増え、2005年にはメディア報道が急増しました。

CSIのような番組はどんな誤解を広めるのか

法科学は速く、確実で、いつでも使えるものだ、という誤解です。画面の中では、ほぼすべての現場からDNAや指紋が見つかり、結果は数時間で届き、鑑定人は明確な一致を宣言します。実際の事件では、DNAや指紋は見つからないか使えないことが多く、分析には数週間から数か月かかることもあります。また、絶対的な確実性はめったにありえないため、鑑定人はより断定を避けた表現を使う傾向があります。番組はさらに職務を混同しています。番組の鑑識捜査員は容疑者を取り調べ、逮捕もしますが、実際の機関ではそれは刑事や制服警官の仕事です。

「CSI効果」と呼ばれる6つの異なる主張

この言葉は曖昧に使われています。犯罪学者のSimon ColeとRachel Dioso-Villaはメディア報道を検討し、この言葉の下に6つの別個の主張があることを見出しました。それぞれ、その主張をしがちな人々にちなんで名付けられています(Cole and Dioso-Villa, 2009)。

  • 強い検察官効果:陪審員はより多くの法科学的証拠を期待し、それがないと無罪評決を下します。
  • 弱い検察官効果:行動を変えるのは陪審員ではなく検察官です。陪審員に視聴習慣を尋ね、証拠がない理由を説明し、法律が求めていない検査を依頼します。
  • 被告人効果:法科学者が英雄的に描かれることで、陪審員が検察側の法科学証人を過度に信頼するようになります。
  • 制作者効果:番組の制作者は、番組が視聴者に本物の科学を教えていると言います。
  • 教育者効果:番組が学生を法科学の講座に引き寄せます。
  • 警察署長効果:犯罪者が番組から、手袋をはめる、漂白剤を使うなどして証拠を残さない方法を学びます。

検察官はCSIのような番組の何を問題にしているのか

陪審員が今やあらゆる事件で法科学的証拠を期待し、それがなければ無罪評決を下す、ということです。2005年、アリゾナ州のマリコパ郡検事局(Maricopa County Attorney's Office)は、陪審裁判の経験がある検察官102人を調査しました。38%が、法科学的証拠がなかったためだと考える無罪評決または評決不能を少なくとも1件報告しました。しかしこの調査では、同郡の評決や無罪評決率に変化は報告されていません。変わっていたのは、検察官の公判準備の仕方でした。

弁護人は何を問題にしているのか

その逆です。法科学者を称える番組によって、陪審員が検察側の法科学証人を過度に信頼するようになる、という主張です。ColeとDioso-Villaは、メディアで取り上げられることは少ないものの、多くの法学者がこの被告人効果を検察官側の主張と同じくらいもっともらしいと考えていると指摘しています。

CSI効果の例

よく挙げられる例は、法廷や検察局から、さらにその外にまで及びます。

  • 「芝生の指紋採取さえしていなかった」として、検察側の仕事は徹底していなかったと不満を述べた陪審員(Donald Shelton判事の回想)。
  • Sheltonが引用したある地方検事の言葉:「今では陪審員は、ほぼすべての事件で私たちがDNA鑑定を用意しているものと期待しています」。
  • 最終弁論で、自分たちに課されていると感じる、より高い立証基準を「テレビの期待」と呼んだ検察官。
  • マリコパ郡検事(郡の公選の首席検察官)が、番組はフィクションであるという但し書きを加えるようCBSに求めたこと、そしてFBIがこの効果についての動画を制作したこと。
  • Monica Robbersが全米の検察官、弁護人、公判担当の裁判官約290人に行った調査:79%が、法科学番組の影響を受けたと感じる具体的な事件を報告し、その報告の28%が、証拠がない理由を説明する証人の活用が増えたことに触れていました。
  • 法廷の外では、テレビで見て手袋をはめたり現場に漂白剤をまいたりするようになったとされる犯罪者や、法科学の学位を選ぶ学生。

いずれも、人々が何を信じているか、あるいは自分の仕事をどう変えたかを示すものです。どれも単独では、テレビが評決を変えたことを示してはいません。

CSI効果は実在するのか:研究が示すこと

要するに、期待は実在しますが、無罪評決の増加は実在しません。4つの系統の証拠が同じ方向を示しています。

CSI効果が議論を呼ぶ理由

この効果の根拠として示されるものの多くは、陪審員ではなく法律家を測るものです。検察官、弁護人、裁判官への調査は、彼らが何を信じ、自らの実務をどう変えたかを示しますが、陪審がどう判断するかについてはほとんど何も語りません。マリコパの研究は陪審員への「CSIの著しい影響」を主張しましたが、評決が目立って変わっていないことは認めていました。実在する効果があるとしても、番組が描く法科学の進歩とは切り分けて考える必要があります(Cole and Dioso-Villa, 2009)。

陪審員は確かに多くの法科学的証拠を期待している

2006年、Donald Shelton判事と犯罪学者のYoung Kim、Gregg Barakは、ミシガン州アナーバーで陪審員として召喚された1,027人を、陪審員選任手続の前に調査しました。46%があらゆる刑事事件で何らかの科学的証拠を期待し、36%が指紋、32%が銃器・弾道、22%がDNAを期待していました。期待は事件の種類に応じて高まりました。強姦事件では73%がDNAを、住居侵入事件では71%が指紋を期待しており、回答者はあらゆる場面であらゆる証拠を求めるのではなく、犯罪に合った証拠を求めていたことになります。

陪審員候補者1,027人が期待した証拠の棒グラフ:あらゆる事件で科学的証拠が46%、指紋が36%、銃器・弾道が32%、DNAが22%。強姦事件でのDNAが73%、住居侵入での指紋が71%
ミシガン州アナーバーの陪審員候補者1,027人のうち、各種の法科学的証拠を検察側に期待した人の割合(Shelton、Kim、Barakによる2006年の調査)。

CSIの視聴者は非視聴者に比べ、犯罪に関連しそうな証拠をより多く期待し、関連しそうにない証拠はあまり期待していませんでした。このため著者らは、視聴者のほうが単に知識のある陪審員だった可能性を示唆しています。

しかし、期待が評決を左右することはまれ

重要なのは、その期待が満たされなかったときに陪審員が無罪評決を下すかどうかです。Sheltonのチームは回答者に13通りのシナリオを示しました。被害者やその他の証人が証言した場合、強姦事件を除き、回答者は科学的証拠がなくても無罪より有罪とする傾向が強く見られました。検察側が状況証拠に依拠した場合は、まず何らかの科学的証拠が欲しいと答えました。CSIの視聴者と非視聴者の間で違いが出たのは13通りのうち4通りだけで、その違いにも一貫性はありませんでした。

無罪評決率は上がらなかった

陪審員がCSIのせいで無罪評決を下しているのなら、2000年以降に無罪評決率は上昇しているはずです。ColeとDioso-Villaは、米国連邦裁判所で目に見える増加を確認しませんでした。Charles Loefflerは4つの大きな州で増加を見出さず、Benoît Dupontもカナダで、CSIに起因するといえる増加を見出しませんでした。

視聴者は信じやすくなるより、批判的になりうる

N. J. SchweitzerとMichael Saksによる模擬裁判の研究では、48人の学生がある裁判の記録を読みました。CSIを見ていた学生は、法科学的証拠をより信頼するのではなく、より批判的に評価しました。著者らはこれを、法科学への期待が高まっている兆候と解釈しています。

米国以外では

研究の大半は、重大犯罪を陪審裁判で審理する国から出ています。裁判官だけで事件を判断する国では、この問題は同じ形では生じません。陪審員資格のある大学生605人を対象としたカナダの調査では、視聴習慣が一部の法科学的証拠の扱い方に影響していました。しかし、その調査でも、オーストラリアで公判後に実際の陪審員を対象とした研究でも、有害なCSI効果は見つからず、オーストラリアの陪審員は法科学的証拠をバランスよく、思慮深く評価していました(Holmgren and Fordham, 2011)。

「テクノロジー効果」(tech effect):よりよい説明

Sheltonのチームは、より広い「テクノロジー効果」が観察結果を説明すると結論づけました。コンピューター、インターネット、メディアによって科学は日常生活に浸透し、陪審員は科学に何ができるかについての大まかな認識を持って法廷に来て、捜査員がそれを使ったことを期待します。この見方では、陪審員の変化はどれも、番組そのものではなく、番組が描いている法科学の実際の進歩から生じています。

圧力は陪審席の外にも及びます。法歯学の学術誌に掲載された、5件の研究を対象とする2022年のシステマティックレビューは、事件に関連するかどうかにかかわらず犯罪現場でDNAを採取するよう捜査員に圧力がかかっていること、そして法科学に対する一般の関心が高まっていることを報告しました(J Forensic Odontostomatol, 2022)。

裁判所と捜査員の対応

Sheltonは2つの対応策を示しており、検察官も独自に実務を変えてきました。

  • 陪審員が求める証拠を得る:警察その他の捜査機関に最新の法科学技術を備え、科学捜査研究所には未処理案件を減らせるだけの処理能力を与えます。
  • 存在しない証拠を説明する:科学的証拠が関連しない場合、検察官にはそれをより説得力のある形で伝える方法が必要です。現場で指紋採取を行ったが何も見つからなかったと証言させるため、法科学の技術者を証人として呼ぶ検察官もいます。
  • 陪審員選任手続で期待について尋ねる:検察官は、陪審員候補者にテレビの視聴習慣を質問していると報告しています。
  • それを基準に陪審員を選ぶ:法科学的証拠の乏しい検察官は、CSIをよく見る人を忌避して外すことがあり、事件が法科学的証拠に依拠する場合は弁護人も同じことをする場合があります。ColeとDioso-Villaは、どちらの想定も必ずしも正しくないと指摘しています。

3D記録が果たす役割

法科学的証拠を提示する人にとって、CSI効果は両方向に作用します。陪審員は現代的で視覚的な証拠を期待し、弁護側はそれが見た目どおり確かなものかを検証します。現場の3Dスキャンが最初の期待に誠実に応えられるのは、2つ目の検証にも耐える場合だけです。

出発点は現場です。現場が解放される前に完全な記録を作成しておけば、裁判所はそこに何があり、何がなかったかを確認できます。その順序は犯罪現場捜査の7つのSに示されています。

スキャンは現場を計測可能なモデルとして記録し、陪審員に示すことも、相手側が自ら計測することもできます。必要なのは、あらゆる専門家証拠に求められるものと同じです。使用した機器の明示された精度、文書化されたワークフロー、そしてバリデーション済みの手法です。法廷での3Dスキャン証拠と事案対応のための3Dスキャンのバリデーションをご覧ください。

三脚に設置したArtec Ray II長距離レーザースキャナー

法廷の証拠物件に使用

Artec Ray II

部屋や屋外の現場を明示された精度で記録する、三脚設置型のレーザースキャナーです。陪審に示す証拠物件には、弁護側が尋ねることになる数値が伴います。個々の証拠品用のハンドヘルドスキャナーと組み合わせれば、現場全体が1つの計測可能なモデルに収まります。

3D点精度
10 mで1.9 mm
測定範囲
0.5〜130 m
視野角
360° × 300°
デモを予約する法廷での3Dスキャン証拠

専門家がこの作業をどのように記録し、開示するかについては、法科学の専門家と訴訟のための3Dスキャンをご覧ください。

陪審が見ることができ、弁護側が検証できる証拠を提示しましょう。法廷向けの現場の3D記録のデモをご予約ください。

デモを予約する

よくあるご質問

CSI効果を簡単に言うと?

CSIのような犯罪ドラマを見ると、陪審員はDNAなどの法科学的証拠をあらゆる事件で期待するようになり、それがないと無罪評決を下す、という考え方です。研究では期待の高さは確認されましたが、無罪評決の増加は確認されていません。

CSI効果は実在しますか?

部分的には実在します。陪審員は確かに多くの法科学的証拠を期待しますが、米国とカナダの評決や無罪評決率の研究でも、オーストラリアの実際の陪審員の研究でも、その期待が無罪評決の増加につながることは確認されていません。Donald Shelton判事らは、代わりにより広い「テクノロジー効果」を提唱しています。

CSI効果の具体例にはどのようなものがありますか?

Donald Shelton判事が回想した、検察側が芝生の指紋採取をしていなかったと不満を述べた陪審員。あるいは、アリゾナ州マリコパ郡で調査を受けた検察官のうち、法科学的証拠がなかったためだと考える無罪評決または評決不能を少なくとも1件報告した38%です。どちらもこの効果に関する主張であり、評決を変えたという証明ではありません。

CSI効果は良いものですか、悪いものですか?

どちらの見方も主張されています。批判する人々は、非現実的な期待を生み、関連しないかもしれない証拠まで捜査員に収集させると指摘します。一方で、より知識のある陪審員や、法科学を選ぶ学生の増加を挙げる人もいます。

CSIはどのくらい正確ですか?

仕事の描写としては、あまり正確ではありません。画面の中では結果が数時間で出て、証拠はほぼ必ず見つかり、「一致」は確実を意味し、同じ捜査員が容疑者を取り調べて逮捕します。現実には分析にずっと長い時間がかかり、証拠がないことも多く、それらの役割は分かれています。

CSIは何の略ですか?

Crime scene investigation(犯罪現場捜査)、またはそれを行うcrime scene investigator(鑑識捜査員)の略で、現場を記録し、証拠を収集する専門職を指します。CSI: Crime Scene InvestigationはCBSのドラマシリーズで、この効果の名前の由来になりました。

法科学の専門スタッフに相談する

法廷向け3D証拠のデモを予約する

現場全体から個々の証拠品まで、法廷で提示する必要があるものをお知らせください。スキャンが、陪審が理解でき、相手側が検証できる証拠物件になる流れをご覧いただけます。

事件に関する機微な情報は不要です。